コラム

第3回:走力アップ、ケガ予防に!足指トレーニングのすすめ

現代っ子の浮指問題

 

近頃、「浮指」の子供たちが増えてきました。浮指とは、足指の付け根から指の腹にかけて、立っていても地面から浮いた状態になってしまっていることを指します。

 

この浮指は、足趾の能力が低下してしまっているサインとも言われており、様々な運動能力の低下や、将来的な姿勢不良、ケガのリスクと関連があると言われています(子供の浮指自体は、それだけで特に健康被害があるというわけではないのでご安心ください)。

 

 

関連記事

 

 

この浮指増加の原因には、クッション性の高い足に優しいシューズを履く機会が増えたり、裸足で活動する機会が減るなどで、足趾を使う機会が大きく減ったことも影響しているのでしょう。

 

 

子供たちの足指の状態について、コーチもチェックできると良いのですが、スクールの練習ではシューズを履いているので、皆さんの足指の状況までチェックすることが困難です…。

 

 

そこで今回は、足趾の能力の重要性、足趾の能力を低下させ得る要因や、その改善トレーニングについて紹介します。


足趾の能力の重要性

速く走るためには、腿や腕を速く動かせることや、地面を力強く蹴り出せることが大切です。

 

 

人は地面を足で押して推進力を得ているので、唯一の地面との力の伝達部分である「足部」の能力は、速く走るために非常に重要です。スクールの練習で頻繁に行うジャンプ運動は、この足部のバネを鍛えて、地面を効率よく蹴り出せるようにするための基礎練習として、様々な種類を実施しています。

 

 

これに加えて、「足の指」までフル活用できるようになることで、さらに地面を効率よく蹴り出すことができるようになると考えられています。

 

 

また、足趾が上手く働くということは、足首回りなど、その他の部位への負担を分散させてあげられることにもつながります。さらに、足趾を動かす筋肉は、足裏のクッションの役目を果たすアーチの形成にも役立つので、ケガを防いで、継続的に、健康的に運動が継続できるためにも、ますますその重要性が伺えます。

 

 

 

※スプリンターは足の親指、人差し指が長い(Tanaka et al., 2017)。足趾を良く使うことで長くなったのか、生まれつきなのかは不明ですが、走ることにおける足趾の重要性が示唆されています。

 

 

では、この足趾の能力を維持、向上させるためには、どういったことが必要なのでしょうか?

足指力を高める機会を整える

浮指はもちろん、足の指でグー、チョキ、パーを自然と作れない、足指に体重を乗せられない、目を閉じて足指の腹を触られて、どの指を触られているかの分からないほど感覚が鈍い…などの場合は、足指の機能を改善させるメリットが大きいと言えます。

 

 

 

その足指の能力改善のためには、しっかりと足指周りが動かせて、かつ足指で力を生み出せる機会づくりが必要です。

 

 

シューズやソックスのサイズは合っているか?

シューズやソックスが小さいと、足趾が丸まり、普段の運動時の足趾の活動が抑えられてしまう可能性があります。

 

シューズの中でもある程度足指を自由に動かせるゆとりがあるか、チェックしてみましょう。逆に、足裏が靴の中でずれてしまうほどのゆとりがあるのも問題です。

 

少し手間はかかりますが、五本指ソックスの活用も一つの手です。足指の感覚がとてもよくなり、普段から足指の動きに意識を向けやすくなります。

 

 

薄底のシューズを履いてみる

薄底で、かつ柔らかいシューズを履くことで、足本来の機能を刺激してあげられるかもしれません。クッション性の高すぎるシューズは、足部の機能を補完しすぎてしまい、逆に足部の機能を低下させてしまう可能性があります。

 

活動量が少なく、足部の機能が低下気味の人にとっては、少し負荷のかかりやすいシューズの方が好ましい側面もありそうです。

 

誤解しないようにしたいのは、普段からスポーツ活動含めた走行、歩行量が多く、足部への負担が大きい人にとっては、クッション性の高いシューズは非常に強力なサポーターになってくれることもある、ということです。

 

これさえ履いておけば誰でもOK!という魔法のシューズは無いので、どんな人が、どんな時に履くものなのかを考慮して、シューズを選ぶ必要があります。

 

 

裸足での運動機会の提供

裸足での運動効果は高く、特にランニングにおいては、速く走るための脚づくり、フォームの改善に有効だと言われています。

 

 

例えば、裸足で走るトレーニングは、足趾が使いやすくなることのほか、自然と前足部〜中足部接地が促され、より良いとされるスプリントフォームに近づくことが報告されています(Mizushima et al.,2018)。いわゆる、ベタベタ、バタバタとした走りの改善に効果的かもしれないということです。

 

 

また他の研究では、裸足トレーニングをした方が、歩幅と回転数が増え、短距離走のタイムの向上が比較的良く、連続ジャンプ能力の改善も良好だったとされています(水島ほか,2021)。

 

 

尾アコーチの裸足スプリント ※整った芝生などで実施してください

 

 

これに関連して、柔道や空手などの練習で、裸足で走ったり、跳ねたり、片足立ち、その他多様な運動機会がある子は、経験上、足部の能力が高い傾向があると感じています。

 

 

尾アコーチも、空手を習っていて、道場を良く走り回っていたせいか、割と足部のアーチがしっかりしていて、足首のバネも強い方でした。かの100m日本記録保持者の山縣選手も、小さい頃は空手をやっていたそうです。

 

 

習い事だけではなく、引っ越しの際は畳の部屋がある場所を選ぶ(スケールが大きな話ですが…)、整った芝生で遊べるような場所に、頻繁に連れ出すなども良いでしょう。

足趾の機能を高めるエクササイズ

その他、自宅で足の指を一本一本ほぐしてあげたり、足指でジャンケンをしたり、ボールをつかむような遊びを行うことも有効です。

 

竹ふみのような、足裏の感覚を良くしてくれるようなグッズも、足裏を意識させる機会を提供するという意味でも、一役買います。

 

専用のチューブ等、足趾を鍛えるグッズも販売されています。

 

 

関連記事

 

 

寒くて外で遊ぶ機会が減りやすいこの時期、ぜひ自宅で、足指に目を向けた運動を実践されてみて下さい!

 

 

関連動画(尾アコーチの専門チャンネルです!高校〜社会人、指導者向け)

参考文献

・Tanaka, T., Suga, T., Otsuka, M., Misaki, J., Miyake, Y., Kudo, S., ...& Isaka, T. (2017). Relationship between the length of the forefoot bones and performance in male sprinters. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 27(12), 1673-1680.
・水島淳, 梶谷亮輔, 九鬼靖太, 柴田篤志, 前田奎, 大山卞圭悟, & 尾縣貢. (2021). 児童を対象とした裸足による疾走指導の効果. 体育学研究, 20156.
・Mizushima, J., Seki, K., Keogh, J. W. L., Maeda, K., Shibata, A., Koyama, H. and Ohyama-Byun, K. (2018) Kinematic characteristics of barefoot sprinting in habitually shod children. PeerJ, 6: e5188.